ソロル投下場

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さん (8t54etyz)2023/8/10 23:50 (No.68993)削除
「……ふぁ…あれ……あぁ、いつの間に寝てたんだろ……まぁ、いいや、」

朝方、黒く塗り潰されていた意識が浮上する。軽く辺りを見回し、机と床に散らばったメモと半ば気絶の様にベッドに倒れ込んで掛け布団もかけていなかった自分に、詰めすぎたか…と軽く考えてはみるが、反省はしない。2度目のあくびを噛み殺しながら机と床のメモを拾い、解読をすすめる。記憶がないから寝かけながら書いていたのだろうし、その証拠に字が乱れ過ぎてところどころ読めない。自分で書いておいて読めないとはメモの意味がないじゃないか、なんて数ヶ月に1回…いや、1ヶ月に1回くらい同じ事を思っている気がするが、そんなことはどうだっていい。それよりもこのメモの方が大事だ。何か天才的な調合が書いてある気がするのだが、肝心の材料が一つ、皆目検討もつかない。

「んー?……いや、わからないな、仕方ない、それっぽいものでやってみるか。」

よいしょ、と起き上がればオーバーサイズのTシャツ1枚の自分が姿鏡に映るが、こんなのは毎朝だ。この格好が寝やすいし過ごしやすいのだから仕方がない。

「___の実がひとつ、___の牙がひとつ、___の血液5滴、___の枝が…2本……あとは…これかな…?わならないけど、とりあえずこれはふたつ、___の花弁を…あ〜…数を書く前に寝落ちしてるな…とりあえず3枚、でいいか、」

部屋の隅に置かれた大鍋に真水を3分の1程張って、それらの材料を丁寧に刻んだり砕いたりして順番に入れていく。ぐるぐるとかき混ぜていれば順調に色が変わったり薄く光ったりもしていたが、5個目の材料を入れたところでぼふん、と煙が上がった。これは…。

「チッ……あ〜くそ、失敗した……これじゃないならなんだっていうんだ昨日の私……は〜…この血液とかこの実とか貴重なのだが……?」

盛大な舌打ちをかましたが自分の部屋だから気にすることはない。住民と話すときは気をつけているし、そもそも寝起きの状態で話さないから切り替えができる。しかし寝起きで実験に失敗すればそりゃ嫌にもなるわけで。

「知らん知らん、そのうち思い出すだろう……ふぁ………まだ眠いな……片付けは起きてからにしよう、作り置きもあるし、もう一度寝るか…」

がしがしと頭を掻けば自身のベッドに今度はちゃんと潜り込んで二度寝に入ると、すぐに意識がどこまでも暗い闇に飲み込まれ、シャットダウンした。あぁ、おやすみ世界、またあとで。
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ゆずりはさん (8tcr3vkq)2023/8/9 20:01 (No.68909)削除
くるくるり。
回れ、廻れ。
嫌って欲しいの?


ぱっと、目が覚める。ここは何処だっけ?
あぁそうだ、何処でもないんだ。
汗で、雨で、張り付く髪が不快感を煽る。
「1人になって、どれくらいたったんだろう。」
あの子と、あの子が創り出した傑作は、頭の中で永遠と回る。

ぼんやりと聞こえる声。
「大丈夫?」
心配しないで、心優しき方。
誰も彼をも傷付けたりはしませんから。
…なんだか、甘いものが欲しいんです。
ティーカップに投げ入れる、角砂糖。
くるくると回して、溶かす。
あぁ、やっぱり今日も。
「僕が歯車にならなくても、世界は廻ってる。」

誰に言うでもなく、呟いた。
「僕、ケーキも、世界も、人間も好きなんだ。」
それこそ、海の底に沈む遺跡に行こうと誘われてついていけるぐらいに!
でも、世界はそんなに甘くない。
「せやから、君は僕の事を嫌いになるんやろ?大丈夫やで、僕は妖者やから。」
何も理解していない相手は、尾も、耳もない姿の青年の頭を撫でた。
「……嫌いに、なってぇや。僕のこと……。」
独り、静かに泣いていた。



ある日の事。ギシギシと不快な音を鳴らす、揺れる椅子に座っていた。
「ふわふわ、するなぁ。」
地に足がつかぬ、曖昧な存在である自分を。
彼と彼が創り上げた名作は。
「箱の中で永遠に流れてる。」
誰かの目に、届いている。

あれ?
「僕のこと、心配してくれるん?僕の事、嫌いやろ?」
大丈夫、誰も彼もを陥れたりだなんてしないからさ。
……なんだか、甘いものが欲しい気分。
角砂糖をティーカップに投げ入れ、溶かすために回す。
あぁ、それでも今日は。
「僕が歯車にならなくても、世界はちゃんと廻ってる。」

誰に届かなくてもいいから、呟いた。
「僕、ケーキも、世界も、人間も好きなんだ。」
片目が無くなった操り人形とだって、踊れてしまいそうな程に。
でも、世界はそんなに甘くない。
「きっと、君は僕を嫌うんやろ?大丈夫やで、わかっとる。」
……目の前の相手は、何も分かってないなお前、と言わんばかりに鼻で笑った。



あれ?
「君はいつもそうやってさ。」
心配いらないよ、君は僕なんかより余っ程清らかで、正しくて。みんなの為の人なんだから。
「大丈夫、誰も彼もを恨んで、呪う…そんな力、僕には無いから。」
なんだか、すごく甘いものが欲しい気分。
ティーカップに、角砂糖を入れて、回すんだ。
あぁ、やっぱり。
「僕が歯車にならない方が、世界はちゃんと廻るんだ。」

誰かに届いて欲しいから、呟いた。
「僕、ケーキも、世界も、人間も好きなんだ。」
それこそ、この銀河に!無重力な世界に飛び込んでしまえそうなくらい!
「そんなこと言ったって、君らは僕の事を嫌いになるんやろ?」
君は、ため息をひとつついた。
ほらやっ……あれ?
そして、君は……仕方ないな、と言いたげに微笑んだ。

「なんなん、それ……。言うたやろ、ケーキも、世界も、人間も好きなんやって……。」
甘いものが欲しくて、角砂糖をドボドボと入れて啜ったら。
誰よりも優しい君が、目を丸くして、半泣きで。
「そんなに入れたら、体壊すよ!!」
なんて言うもんだから。

「……大丈夫やろ、僕。妖者やしな?」

___僕だって、笑っちゃうじゃないか。
ゆずりはさん (8tcr3vkq)2023/8/9 20:01削除
元曲「とある一家の御茶会議(くるりんご)」
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恵霧さん (8t75voii)2023/8/9 19:42 (No.68906)削除
「なんで僕は飛べないの?」

弱々しく泣く幼い子供が親に問いかける。
綺麗な白い翼を持つ親は大粒の涙で頬を濡らす我が子に冷たい視線を浴びせた。

『普通は飛べるのよ』

ため息混じりに放たれる“普通”に何度も頭を悩ませた。
有翼族は皆飛べる。
教わらなくても空を舞い、風と踊る。

『泣いてる暇があるなら練習でもすれば良いだろ?』

腕を掴まれて…高所に建てられた己の家から突き落とされるのは日常だった。

「ご、ごめんなさい!落とさないで!」

必死に助けを求めても親は残酷に外に追い出す。
有翼族は高所に家を建てる。
幼子は物心つかないうちに空を舞う。
生きる為に翼を動かして空を飛ぶ。
それこそ恐怖を覚える前に。

『また落とされてる』
『普通は飛べるのにな』
『私知ってる、あー言うの出来損ないって言うんでしょ?』

ボロボロの身体を引き摺って隅で泣いてれば周りに貶される。
狭くてジメジメとした場所に隠れて泣くしか出来なかった。
意味の無い翼。
出来損ない。
聞き飽きた嘲笑の声は瞳の色を変える程に幼い子供を傷つけた。
群れを成す習性がある有翼族の中に彼の居場所は無かった。

--------------------

『大丈夫だってアイツ飛べないし』
『飛べない翼なんて千切れても平気だろ?』
『もうやめなよ〜』
『こんなのオフザケだから平気平気』

頭翼を引っ張られ、嘲笑って空に逃げる同世代の子を下から見上げるのがどれほど彼を傷つけただろうか。
彼らにとっては遊びで済まされる事でどれほどの傷を産んだのだろうか。

『飛べないお前が悪い』
『弟よりも飛ぶのが遅いなんて…恥ずかしいと思わないの?』

愛される事も優しい言葉も言われなければ知らないままだ。

『あんな翼じゃ飛べないだろ』

きちんと手入れをすれば飛べるかもしれない。

『どうせ飛べないのにね』

怯えないで飛び降りれるようになったら飛べるかもしれない。

『また落ちたよ』

飛べるかもしれない

『いつ飛べるか賭けようぜ』
『絶対無理でしょ』
『ずっと飛べないに私の翼を賭けるわ』
『飛べるに賭けるバカ居ないだろ』



-------------------‐

『君なら飛べなくても良いよ』
「なんでそんな事言うの?」
『もっと良いやり方があるよ』
「…僕には分からないよ」
『君は綺麗なんだから』
「…そんな事…」
『大丈夫、君の事を素敵だと言う人は沢山居るよ』

甘い言葉は愛に飢えた幼子を惑わすのに充分だった。
昔は鑑賞種族と言う言葉があった。
その為に特徴を持った子供を攫う事もあった。
奴隷だって居た。

でも今の時代はもっと手っ取り早く金になるものがある。

若く未熟な四肢を晒し
白い柔肌を見せて
美しい容姿で魅了する

褒められるのも求められるのも初めてだった。
注がれる視線に邪な感情があっても嬉しかった。

『出来損ない』
『君は美しいから沢山の人が見たいんだよ』
「僕は美しいから」

『飛べない翼』
『魅力は嫉妬の的だからね。君はなにも悪くないよ。』
「僕は悪くない」

『恥ずかしい』
『此処には君の居場所があるんだよ』
「此処には…」

『お前が悪い』
『だから君はそのままで良いんだよ』
「…」

-----------------------------

『愛されてないガキは扱いやすい』
『ちょっと褒めてやればすぐ逃げなくなる』
『飛べれば居場所があったんだろうけど』
『鼻につく言動は見逃してやれよ』
『アイツは金を産む鳥だからな』
『鳥と言っても飛び方を忘れた鳥だけど』
『使えなくなれば翼をもいで捨てれば良いさ』
『そういやアイツ群れにも見放されたんだろ?』
『ちょうどいい、ド変態なコレクターは五万といる』
『居なくなっても困る奴が居ないって便利だからな』
『違いねぇ』

-----------------------------
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恵霧さん (8t75voii)2023/8/9 19:42 (No.68905)削除
『アンタうちの店で働かんかい?』

程よいハスキーボイスが海で響く
ふくよかな体をした…お世辞にも綺麗とはかけ離れた淑女は海底で己を勧誘していた

「いつも言ってるだろう?私は海の方が肌に合うんだ」

海の青に溶け込むには綺麗な触手を揺らして言葉を返した

『そんな事は知ってるよ、アンタは地上を棄てたからね』

彼女の言葉通り己は地上を棄てた
毒蛸が法を犯さないよう地上のルールに溶け込むのは酷く苦労すると思ったからだ

「なら分かるだろう?私は海で好き勝手生きたいんだよ」

2人が喋る度にコプコプと唇から泡が上がる
海面に昇りチラチラと光る空気は何処か綺麗で
発光物質を利用し作られたランプの光を返していた

『齢7歳のガキンチョが海で好き勝手してるのを止めた恩人のお願いを聞くのも有りだと思うけどねぇ』
「齢7歳のガキンチョは海にも暗黙のルールがあったなんて知らなかったのさ」

7歳…
己が地上で生きる事を辞めた時だ
両親に海で生きると物申して飛び込んで
喰いたいものを喰らい
ヤリたい時にヤる

『喰えるもの全て喰うわ家で育ててた魚は喰い荒らすわ』
「野良と家畜の区別くらいつけてくれ」
『地上でも海でも女を抱けば孕むって常識も知らんわ』
「ガキの腰振りを好むモノ好きが多かったんだよ」
『小生意気に口答えするわ』
「クカカッわぁかった、わかったから、プジーも昔を掘り返すなよ」

己が唯一海で勝てない人
いや、勝とうとしない人
針千本の魚人であるプジーはため息混じりに幼い頃の自分の話をよくする

『アンタは私と同じで毒耐性もある、それに輩に対抗出来る力もね』
「私以外にも適任者は居るだろ?」
『私はアンタが良いのさ』
「私はサディストに嬲られる趣味はないぞ?」
『誰が結婚を申し込んだんだい』
「上手く返したと思ったんだけどな」
『逃げるんじゃないよ。あと私はマッチョな男が好きなんだ』
「屈強な男を何回泣かせたのやら」
『蛸は足を数本もがれても生きてられるって言うねぇ』
「クカカッシャレにならんなぁ」

軽い受け答え
彼女と過ごしたのは3年という短い期間
だが関わってきたのは10年だ
随分長く彼女と友人関係ではあったが…

『さて、店に行くかいな』
「行ってらっしゃい」
『アンタも行くんだよ』
「断ったら?」
『千とまでは行かないが…随分と風通しの良い身体が出来上がるね』
「それは恐いね」

真剣に店に連れてくと宣言されたのは初めてだ
それこそ己を脅すようなやり方で

「勘弁してくれ、プジーと仕事をするよりプシーと戯れてたいんだ」
『御託は要らないよ蛸助』
「その呼び方は辞めてくれ、プルプって名付けたのは貴女だろう?」
『まともに呼ばれたいなら着いてくるんだね』

逃げられそうにないと分かれば肩を竦めるばかり

「イェス、マム。命令通りに。」

ため息混じりに海面に行く
彼女にはどうも逆らえない

-------------------‐

今となれば彼女の誘いにのって良かったと思うよ
おかげで煙草を知れたしなぁ
本物の親?何を言ってるんだ
私の親はプジーだけだよ
さ、身の上話はコレで終いだ
新しい客が来たからね

ようこそ、私達のギフトへ

-------------------‐
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緋彩さん (8t5fii4o)2023/8/9 00:27 (No.68856)削除
"Sending this to you who have lost memories. This is both a blessing and a curse.The beginning of the nightmare has only just begun."
「記憶をなくした君に贈る。これは祝福であり呪いである。悪夢はまだ始まったばかりなのだ。」

 暗い海の中、体は下へ下へと沈んでいく。心地良い感覚に嗣は次第に眠くなっていき意識を手放すだろう。次に目を覚ますとシェアハウスの自室のベットの上だった。何かとても重要なことを忘れている気がする。ただそれを嗣は思い出すことはできないだろう。
 気持ちのいい朝を迎えた嗣はいつもと同じようにカーテンを開いて部屋の換気を行う。外は快晴、夏の青空が嗣の顔を照らす。壁一面に貼られているメモを確認して自分の記憶が無くなっていないか確認を取る。どうやら今日は大丈夫なようだ。
 記憶の確認を終えると一階の共用スペースに行き掃除を始める。今日は平日だからか一階には誰も居ない。嗣はホッと胸をなでおろして安堵する。人付き合いが苦手な嗣にとって人がいる場所というのはそれだけで気が散ってしまうのだ。この家に悪い人はいない、と思っていてもどうしても頭の中で考えてしまう。少し時間が経ち、朝の掃除を終える。疲れた嗣は一息つくためにソファーに横になり目を瞑る———。

 いつの間に意識を失っていたのだろうか、次に目を覚ますとそこは工場の路地裏に立っていた。ここはどこだろう。先程までシェアハウスでいたのにどうやってここまで来たのだろうか。思い出そうとしても頭に霧がかかったようにして思い出せない。既視感はあるのに思い出せないこの状況に戸惑いながらも嗣は路地裏から表通りに出ていく。
 すると目の前に二人の少年と少女がいた。特別何かあるようには見えないのに二人から目が離せない。そして嗣の視界に目を見張るようなモノが入る。二人の子供や他の人達は気が付いていない違和感。     
 子供の頭上から黒い泥、いや悪意の塊という方が正しいのか。禍々しく、触れてはいけないと警鐘が頭が割れるほどの音で鳴り響く。その泥は子供を飲み込んだあと地面を這って広がっていく。周りの人間はまるで認識していないかのように逃げることもしない。ただ飲み込まれていくだけ。嗣も体が動かない。いや、動かそうとしても動けないのである。あの泥が悪意の塊だったとしても何故このようにすべてを飲み込んでいくかは理解できない。やがて、その泥は嗣をも飲み込まんとする。嗣の体に黒い泥が触れると激痛が走る。体の肉が無理やり引きちぎられるような痛みが全身を襲う。痛い痛い痛いいたいいたい...。 
 痛みにより気を失った嗣は、次に目を覚ますと暗い海の中に沈んでいる。只、先程みたいにゆっくりと沈んでいくような、心地いい感覚とは違う。それは、何かが嗣の足を掴み、この暗い海から引きずり上げようとしている点だ。それはとても不快感を与えてくる。引きはがそうと抵抗しようとしても体が思うようには動かない。段々と引きずられていくのを感じながらまた意識を手放すだろう。
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ゆずりはさん (8tcr3vkq)2023/8/7 22:07 (No.68733)削除
まいります、まいります
ゆきます、逝きます
なりますように、成増ように



__君の行先どこですか?
そんなもの、私が知りたいよ。
__どうか良き旅になりますように。
どうせ今回も変わらないよ。

「迷いに迷って、流れ流れて。……別にいいです、慣れていますから。」
ここは何処だろう?遠くで声がする。
_ここは迷える人が集う場所。
じゃあ、
……じゃあ。
「私は違いますよ。迷ってませんから。」

_あなたの終着駅は何処ですか?
きっと大地です。そこに還るんですよ。
_目的の駅は通過してませんか?
目的の駅すらわかりませんから通過したかも不明です。
___この「 」は「 」行きになります。
え、なんて言いました?……ちょっと!

「ッ、!…………夢、でしたか…。」
なんだか夢見が悪い気がする。あくまでも気がするなため、気の所為のことだって有り得る。
悲しみに暮れたって、この世は、なんて嘆いてみたって現状は変わらない。なら、何もしないのが1番利口なのだ。
そう、それが一番……
「貴女を孤児院に返すことにしたから。あぁ、気味が悪い!」

こういう、ばあ、いは…………
「分かり、ました。短い間でした、が…お世話になりました。」
ちゃんと、言えて居ただろうか。
いや、聞いて貰えたかな。なんて。高望みだったのかもしれない。


_人気はありますか?
あったらこうなってませんよ。
_君はいったい何番目?
わかりません。最後にも選ばれない、そんな存在ですよ。きっと。

「夢も希望も、ありはしなかったんです。……若輩者の言葉ですけれどね。」
なんて、静かに呟いてみる。
_誰かの目には留まります?
……留まっていたら!!!…怒っても何にもなりませんね。
「留まっていたら、私は今独りじゃないんですから……。」

_さぁ通過待ち。
無難にやり過ごせ。
_さぁ待ち合わせ。
次は何日だろう。
_後から来た子に追い抜かれ。
仕方が無い、私はこんなんだから……。



「また、あのころの……。」
この身体を伝う汗は、気分がいいとは言えないもので。
嫌な日々を思い出すには十分すぎて。
身体を小さく丸めることしか出来ずにいて。

「どうしたの、 。」


えっと……
「なんでも、ありませんよ。 。」
誰の目にも、留まってはいけない。
優しくされる?
……それはちょっと、わかりません。




_ねぇ、大丈夫?
……何がですか。
_君は、大丈夫?
……大丈夫、ですよ、きっと。
_誰かに必要とされてます?
…………されて、います…よ。され、て……。




__そろそろ終電の時間です。
ま、待ってください……!
__行先はもう決まりました?
わからない、です……!
__最終列車が参りました。
まだ、まだなのに…………!!
__君の逝先何処ですか?
まだ、嫌だ…………!!


「泣かないで、良いんだ。」
「大丈夫、もう大丈夫だよ。」
「安心しな、今日から……家族だ。」
「……おひぃさん、苗字。俺たちのをあげる。…ッスよね、組長。」
「あぁ、お前たちのだ。儂のじゃ何かあった時困るからな!わはは!」
「笑えねぇよ!」
「ま、苗字が違っても家族なことに変わりはねぇさ!」
「皆のこと、好きに呼べばいいさ。」


___1番ホーム、列車が参ります。
___最終列車、発車しますから。
___乗り遅れには気をつけて。
___どうか、良き最期を迎えられますように。

__「この列車は、幸福行きになります。」
__「乗り遅れには、気をつけて。」
__「幸福行き、最終列車が参ります。」
__「君が逝く場所どこですか。」
__「出発進行、走り出した。」
__「後戻りは、許しません。」




「次は何処に行くんですか、紘兄。」
「おひぃさんの行きたいところ。」



ほらね?
ゆずりはさん (8tcr3vkq)2023/8/7 22:08削除
元曲「東京モノクロ(ガルナ/オワタP)」
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